こんにちは。
業務改善ITコンサルタント
黒木やすひろです。

経営上の課題や目標達成、
或いは問題の解決策を考えたとき
AIやIoTといった新しい技術に限らず
何らかのIT、システムが関係することは
今では当たり前になっています。

とはいえ、システム担当がいない、
システム導入の経験がない会社では
システムやクラウドサービスなどを
導入したいと思っても、
何から手を付けて良いかすら分からない。
となってしまう事は多いと思います。

システム導入を成功させるためには
何をしなければいけないのか?
気を付けるべきことは?
そもそも、システム導入の成功とは?
システム導入における経営者の役割とは?

今回はこのような事をお伝えします。

【ITプロジェクトの成功率は3割】

私がプロジェクトマネジメントを始めた
およそ20年近く前、
ITプロジェクト、システム導入の
プロジェクトの成功率は約3割
と言われていました。

当時は自社のサーバ室やデータセンター
にサーバーを構築し、
プログラムを一から作るスクラッチ開発
と呼ばれるシステム開発が主流でした。

業務で使う機能を一つ一つ設計して
プログラムを作っていくので、
バグ潰しに苦労したり
途中で考慮不足に気づいたりして
スケジュールの超過
予定したコストの超過など
 Q=品質
 C=コスト
 D=デリバリ(スケジュール)
を守って完了できるITプロジェクトは少数でした。

しかし、今ではクラウドサービスが充実し
一からシステムを作るスクラッチ開発は
そのシステムが企業の強みそのものになる
ような特別なものに限られます。

その他の一般的な業務のシステム化は
既存のクラウドサービスを使い
パッケージ・サービスに業務を合わせて
早く使い始めることにより、
システム導入の効果をいち早く得る
という進め方が主流になっています。

そのため、現在のITプロジェクトの
成功率は高くなっているはず、
なのですが、
じつはそうでもないのが実態で、
プロジェクトの成功率は
せいぜい5割~6割といわれています。

クラウドサービス導入なのに失敗?

クラウドサービスは、
一般的によく使われる機能が
予めシステムとして提供されていて、
企業や個人は、月額料金などの
利用料を払うことで、
独自にシステムを開発することなく
その機能を使うことができるサービスです。

予め機能が提供されているので
プログラム開発が遅れたり
バグが解消できない
といったことは当然起こりません。

では、導入の成功率が10割近くでない
というのは何故なのでしょうか?

この理由は、
プロジェクト成功の考え方が変わったから。

前述のとおり、かつては新しいシステムを
作るところが大変でした。
なので「無事稼働させること」ができれば
成功と言うことができました。

しかし、クラウドサービスの利用により
システムを作る必要がなくなった今、
新システムが「稼働」するのは当たり前。

その上で、そのシステム導入に期待した
効果・成果が出て初めて成功
と言えるのです。

ITプロジェクト失敗の原因は今も昔も同じ

このようにITプロジェクトの
「成功」の考え方
は変わってきましたが、

ITプロジェクトが上手くいかない要因
失敗する主な原因は
ほとんど変わっていません。

その、今も昔も変わらない失敗の原因は
「上流工程」といわれる部分にあります。

「上流工程」とは、
システムを作り始める、導入し始める前に
・どのような経営課題を解決するために
・今の仕事のやり方をどう変える必要があるのか
・今そうできない理由がどこにあるのか
といった事を深く考える。

そのうえで、
システムで実現すべきことと
システム以外で実現すること
を明確に決めていく行程です。

この段階で上記のようなことが
十分に検討されていないと

開発段階で何度も仕様変更を繰り返し
コストもスケジュールも予定を超過してしまう

実際の業務の流れの中で上手く使えず
思ったような効率化ができない
全く使われない機能になってしまう
といった事が起きてしまうのです。

【なぜ失敗してしまうのか?】

システム導入における上級工程の重要さは
ずっと以前から言われ続けています。

にもかかわらず、
今でも同じ失敗を犯してしまう
その原因はどこにあるのでしょうか。

私はその最も大きな要因として

「IT・システムを活用するということについて
きちんと理解しようとしない」

ことがあると感じています。

システム導入経験のない会社の支援をすると
とにかく
「システムは分からないので」
「ITは経験がないので」
と必要以上に警戒されます。

その一方で、
「このシステムを入れれば業務効率化ができる」
「業務効率化にはこのシステムが絶対必要」
とも言われます。

知らない・わからないから
なるべく距離をおいて関わらないようにしたり
逆に、
とにかく凄いもの、何でもできる便利なもの
と、過剰な期待を抱いたりして

本当に考えなければいけないことに
意識が向かなくなってしまっている。
と感じることが非常に多くあります。

【どうすればシステム導入に失敗しないのか?】

システム導入の経験がないのですから
知らない、わからないのは当然です。

であれば、失敗しないために必要なことは
「知ること」
システムを活用するということを
正しく理解することができれば
失敗するリスクは格段に低くすることができます。

そういうと、
「だから、それをを理解するのが難しいんだよ!」
と言われるかもしれません。

でも、本当に理解できないほど難しいのでしょうか?

大企業に限らず、担任のIT担当がいないような
規模の会社の中にも、
ITを上手く活用している会社はたくさんあります。
そして、その人たちが特別優秀なわけでもありません。

プログラムの作り方を知る必要はありません。
コンピューターが動く仕組みを理解する必要もありません。

ただ、
システムの正しい使い方
業務に活用するための考え方
を理解することが大切です。

私たちは仕事でボールペンを使います。
しかし、ボールペンを作る必要はありませんし
字が書ける理屈を知る必要もありません。

ただ、色や太さ、書き心地などを考えて
用途に合って自分の使いやすいものを選ぶだけ。

あとは、
どんな目的で、
誰のために
何を書くのか
をしっかり考えて書く。

ここをしっかり考えないと
どんなに高級なボールペンで書いたとしても
役に立たないものになってしまいます。

システム導入も同じです。
どのシステム、どのクラウドサービスを使うか
を考える以前に、
どんな目的で
誰のどの仕事を
どのように変える必要があるのか
を納得いくまでしっかり考える。

最も重要なのは経営者の意志を明確にすること

このように現在の業務の問題や
ありたい姿を考えていくと
必ず役割や立場によって異なる意見が出てきます。

それぞれの立場でしっかり考えた結果なので
どちらの意見も正しい。
でも両方共を選ぶことはできない。

また仮にどちらかの案に決めたとしても
もう一方に不満が残っては
その後の仕事に支障が出るかもしれません。

そこで重要になるのが経営者の意志です。

実現したい会社の姿
解決すべき問題の優先順位など
判断に迷った時に
どちらを選ぶのがより望ましいか
経営者がしっかりと方針を示す。

そうすることによって、
異なる立場で仕事をしている人達が
共通の判断基準を持って
解決策を考えることができるようになります。

経営者がシステム導入にしっかり関与し
意志や価値観を明確にすることが
せっかく導入したシステムが役立たずになる
失敗のリスクを大きく減らすことにつながります。

導入の支援は丸投げでなく道案内

とはいえ、やはり経験がない中では
具体的にどうやればいいのか分からない
となってしまうかもしれません。

そのような場合は、
やはり経験豊富な人に教わるのが
間違いが少ないと思います。

具体的には社外のコンサルタントや、
ITベンダー等に支援を依頼するイメージですが
この時に大切なのは、
依頼する内容は
「業務の肩代わり(=丸投げ)」ではなく
「道案内」だと認識しておくこと。

先程お伝えした通り、
システム導入の成否のカギは
どんな目的で
誰のどの仕事を
どのように変える必要があるのか
を納得いくまでしっかり考える。
ことです。

そして、これらの事は
実際にその業務に携わる人にしか考えられません。

旅行に例えると
ガイド(=専門家)は
そこまでの行き方は教えられますが
何処に行くのか
行った先で何がしたいのかを決めるのは、
ガイドではなく、あなた
だということです。

IT・システム導入を思いついたら
どんなシステムを選べばいいか悩む前に
改めて
どんな目的で
誰のどの仕事を
どのように変える必要があるのか
他人が聞いてすんなり納得いくレベルまで
考えてみてください。