GoogleやOffice365、サイボウズなどの
グループウェアは業務改善や情報共有に
とても便利なツールです。

しかし、これらの優れたツールも
ただ導入しただけで業務効率がアップしたり
社内の情報連携が良くなるわけではありません。

場合によっては、費やしたお金と労力、時間を
無駄にしてしまうことにもなりかねません。

この記事では、私が実際にグループウェア導入
で経験した失敗と、こうしておけばよかった
という反省・後悔をお伝えします。

現在グループウェアの導入を考えている方や
グループウェアに関心がある方は、
ぜひ最後までお読みください

グループウェアという言葉を聞いたことがない
という方に向けて、念のためお伝えすると
グループウェアとは
メール、掲示板、スケジュールなど、
情報共有・連携に便利なツールが複数組み合わされた
サービス・製品の総称です。

 

グループウェアを「ひとくくり」に考えて失敗しました

前述のとおりグループウェアは複数の機能が
組み合わさったツールです。

そのツール群を「グループウェア」という
ひとつの業務システムのように考えて
まとめて更新した結果、

個々ののツールが担う業務の深堀りが不足し、
システム化の際に最も大切な業務の見直しが
中途半端で残念なシステム更新になってしまいました。

一般的に業務で使うシステムには
会計システムであれば会計・経理業務
勤怠管理システムであれば勤怠管理業務
のように、そのシステムを使って行う
「業務」があります。

そしてシステムを使うことで、
その業務をどのように変えたいのか、
どう良くしたいのかを明確にすることが、
システム導入において非常に重要になります。

しかしグループウェアの場合、
「グループウェア業務」という
形の決まった業務があるわけではありません。

そのため〇〇業務という塊ではなく
一つひとつの作業に近いレベル感で
例えば、メールであれば
・メールを送信するときの誤送信をなくしたい
・送受信の履歴をxx日間保管したい
・PCで受信する前にウィルスチェックしたい
のように、ツールを使ってやりたいことを
具体的に挙げていかなければなりません。

この時、各製品のウリになるような機能は
思いつきやすいのですが、
あまりに当たり前と思っていて意識しない
ような部分に落とし穴があったします。

この後、グループウェアの主な機能別に、
私が実際にやってしまった失敗をお伝えします。

メールセキュリティを考えすぎて失敗しました

仕事に欠かすことのできないメールですが、
頻繁に送られてくる迷惑メールや、
メールが原因のウィルス感染、
誤送信による情報漏洩など、
セキュリティで怖い面も多いですよね。

私もグループウェアを更新する際に
メールのセキュリティ対策を重視して
色々な仕組みを検討・導入しました。

しかし、ユーザーの仕事のやり方や
セキュリティ意識に対する見込みが甘く、
導入コストと検討の時間をムダにしてしまいました。

特に勿体なかったのは誤送信防止対策で、
「社外へメールを送信する際に5分間保留し、
宛先間違いに気付いたら取り消せる」
仕組みでした。

情報処理推進機構(IPA)が発表している
「情報セキュリティ10大脅威」でも
「不注意による情報漏洩」が毎年ランクイン
しており、メールの誤送信(宛先間違い)は
その代表例として注意が呼びかけられています。

そのため当然必要な仕組みとして導入した
送信保留機能でしたが、
いざ稼働してみると・・・

「取引先に急いで資料を渡す必要がある」
「相手を5分間も待たせるわけにはいかない」

という声が多くあがりました。

そこで、緊急時の回避策として
「送信保留を回避する仕組み」
を考えて追加し、使い方を案内しました。

その結果、
多くの人が保留回避をデフォルト設定
にしてしまい、

「送信保留機能」は殆ど意味のないものとなり
回避も含めて仕組みを検討した時間と労力は
ムダになってしまいました。

お気づきの方も多いと思いますが、
この例は送信保留の機能が悪いのではなく、
資料を打ち合わせ直前に送る仕事の進め方
の方にこそ問題があります。

そうして焦ってメールすることにより
さらに誤送信のリスクが増すはずです。

システム的な仕組みを導入する前に
従業員へのセキュリティ教育や
業務の問題点の整理をしっかり行い
セキュリティリスクに対する共通認識を
作ることができていれば、

今回の送信保留機能が
仕事のやり方を見直すきっかけにもなり
コスト・リスク・利便性のバランスのとれた
ムリ・無駄のないセキュリティ対策が
実現できたのではないかと反省しています。

社内掲示板のあり方を見直さずに更新して失敗しました

社内の通達やお知らせを発信する社内掲示板。
最近は、いかにも電子掲示板といったものから
SNS風のものまで様々な種類があります。

私が社内掲示板を更新した時、そのような
パッと見の真新しさや細かな機能に気を取られ、
掲示される情報そのものの見直しが不十分
になってしまいました。

更新前の掲示板は、各部署が独自の基準で
(つまり勝手に)掲示する情報の分類を
作成し、しかも入り口が別々だったため
ていたため、掲示を見る側にとっては、

・どこに必要な情報があるかわからない
・別々な入口を開かないと辿り着けない

という不満がありました。

そこで、新しい掲示板には
「新着情報を一覧表示できる」ようにし、

更に、ユーザからの強い要望で
「一度読んだ記事がわかる」
「重要なお知らせにマークを付けられる」
といった機能も盛り込み問題を解消した

はずでした・・・

しかし実際に運用を開始してみると、

・いらない情報が多すぎる
・欲しい情報が探せない

といった不満が残る残念な結果になりました。

掲示板の細かい機能を考える以前に

どのような情報を、
どのようなルールで発信するのか、

期間限定の一過性の情報と
規程類のように常に必要な情報の使い分け

このような情報提供のあり方について
もっと深い議論をすべきだったと反省しています。

旧システムへの慣れを甘く見て失敗しました。

使い慣れたシステムから変更すると
大なり小なり抵抗はありますが
スケジュールの更新ではその慣れを
甘く見すぎました。

個人のスケジュール管理に加えて、
自分の予定を他人と共有することで
会議の調整や会議室の予約ができる
スケジュール。

私がグループウェアを導入する前から
既にスケジュール製品を利用していたのですが

個人の予定と会議室予約を同時に行ったり
他の人に会議招集をする
といった機能は活用できていませんでした。

その為、グループウェア導入時に
他の機能と一緒に別の製品を導入し
会議招集などもできるように
運用ルールを作りました。

これでスケジュールは更に使いやすくなる
と考えていたのですが、使い始めてみると

会議招集の便利さよりも
見た目と操作感が変わってしまったことへの
拒絶反応の方が勝ってしまいました。

使い方の簡単な機能ほど
慣れたモノから使い勝手が変わることへの
抵抗感は強くなるため
事前の説明や慣らしの期間をもっとしっかり
取っておくべきだったと後悔しました。

紙とハンコを置き換えただけの電子承認は失敗でした。

電子承認はワークフローとも呼ばれ、
テレワークや働き方改革でも話題になっています。

しかし、紙の書類を電子化しただけで、
承認者の数や順序の見直しが足りず
そのメリットを十分に出すことができませんでした。

例えば、

・承認者が多すぎ
承認者(=ハンコを押す人)が多すぎると
責任の所在が曖昧になるという点もありますが
何より決裁までに時間が掛かります。

紙の時の半分くらいの承認期間を目指して
ルートの整理をやるべきでした。

・承認フローが複雑すぎ
文書の種類や金額などの条件に応じて
承認ルートや決裁者が変わりますが
そのルール、バリエーションが複雑だと
承認ルートの設定も複雑になります。

その結果、特別な処理をさせるためのプログラム
開発に数十万円のコストをかけなければならなく
なった上に、人事異動の際のフローの修正は
特定の人にしかできなくなってしまいました。

せっかく電子承認を導入するのであれば
いっそシステムのせいにして
業務のやり方そのものをシンプルで
効率的なものに見直す機会にすべきでした。

スマホセキュリティを厳しくしすぎて失敗しました

今からグループウェアを導入するであれば
スマートフォンから使るようにしたいですよね。

しかしここでも難しいのはセキュリティ。

パソコンとは異なる環境のセキュリティに
神経質になりすぎて失敗しました。

スマホからグループウェアを利用するにあたり
盗難・紛失した場合に情報を盗まれないよう、
端末にデータを保存できない仕組みを採用しました

その結果、
手軽さ軽快さがウリのはずのスマホで

メールを開くのに時間が掛かりイライラ
パスワードがコピペができず添付ファイルが開けない

セキュリティを気にしすぎた結果
スマホの利用率が上がらない
仕事の生産性も上がらないということに。

セキュリティ意識の低さを
システムでカバーしようとしたのですが
余計なお世話になってしまいました。

やはりセキュリティ対策は
セキュリティ教育と運用ルール
を一番に考えなければと反省しました。

まとめ グループウェアの導入と業務の見直し

初めにお伝えしたように、
グループウェアがカバーする業務の範囲は
作業に近いレベルのものになります。

その為、どうしてもツールの機能に注目して
製品選定とその後の導入を進めてしまいがちです。

しかし逆に細かい作業レベルだからこそ
業務を見直し、効率化、標準化をしないで
ツールだけを置き換えただけでは
仕事全体の大きな変化が起こることはなく
期待した効果は得られ無いままです。

逆に、システム導入で最も大切なプロセス

・現状の業務の問題点の明確化
・問題を解消する新業務の検討
・新業務に必要なシステム機能の定義

をしっかりと行ったうえで
検討した新業務にマッチした製品を選ぶ。

更に、業務を変えなければならない理由や
セキュリティなど前提となる知識を
十分に利用者に伝え、
納得感を得ることができていれば、

グループウェアの導入・更新は
システムを変えるとともに
仕事のやり方を変える機会に、
更には組織風土をも変える機会にもなり得る。

グループウェアには
そんな力があると思います。