こんばんは。
デジタル活用コンサルタントの黒木靖博です。
クラウドサービスの普及で誰でも簡単に活用
することができるようになりました。
it ベンダーのホームページやチラシにも
いかに短期間で簡単に導入ができたか
という事例が数多く紹介されています。
しかし華々しい成功事例の一方で
失敗事例が多くあることも事実です。
今回はクラウドサービスを導入した際に
起こりがちな問題についてお伝えします。

1.自分たちでやらないといけないことが予想以上に多い

クラウドサービスを利用する場合、
システムそのものは既に完成しています。
なので、利用契約が完了したら
「すぐに使い始められる。」
と思ってしまいがちです。
しかし、
実際に業務で使い始めるまでには、
自分たちで準備しなければならないこと
が結構たくさんあります。
ここでは、特に重要な3つをご紹介します。
まず絶対に必要になるのは、
「導入するサービスの使い方を学ぶこと」
ITベンダーさんが提示してくれる導入計画で
ユーザー教育とか運用慣熟、トレーニング
などと言われる作業です。
ユーザー教育の進め方には、
導入するサービスや、
ITベンダーさんへの委託範囲によって
動画のマニュアルを見て自分たちで進めるものから
集合教育として数日間まとまった講義・実習形式のものまで
いくつかの形式があります。
何れの場合もここで、実際にシステムを使う人に
新しい仕事のやりかたを覚えて、
慣れてもらう必要があります。
教育を受ける対象の方は、日常の業務をこなしながら
新しい仕事のやり方も覚えなければいけないため
予め業務のスケジュールや分担を工夫するなど
負担が大きくならないような配慮が大切です。
2つめに必要な作業は
「今手元にある情報を整理すること」
クラウドサービスを業務で使うためには
予め必要な情報を登録しておく必要があります。
たとえば、経費精算システムであれば、
勘定科目
立て替え払いをする従業員の情報
よく使う取引先の情報 など
また、勤怠管理システムであれば、
勤務形態の区分などのほかに
現在までの勤務時間や
休暇の取得状況(残数)など
これまで別の手段で管理していた情報を
新しいシステムに合った形に加工する
必要もあるかもしれません。
基本的には今ある情報なのですが
きれいにまとまっていなかったり、
不足があったりすると、
作業量が多くなってしまうかもしれません。
3つめが一番大事なことなのですが
「新しい仕事の手順・ルールを決めること」
です。
「それはシステムで決まってるんじゃないの?」
と思われたかもしれませんね。
確かにクラウドサービスによって
基本的な仕事の流れは決まっています。
しかし、どんなにクラウドサービスが良くなったと言っても、
例えば領収書の写真を撮っただけで
経費精算が完了するわけではありません。
承認は誰が、どの順番で行うのか?
用途によって承認者が変わるのか?
自分で精算処理を行わない偉い人の処理はどうするのか?
などなど、新しい仕組みを使うために
今までのやり方を少しづつ、
ときにガラッと変える必要があります。
そして、それを決めるのはITベンダーではなく
利用する企業、ユーザー側の役割。
あなたの役割になります。
もちろんITベンダーさんは
他社の事例なども紹介しながら
「こうしたらいいと思いますよ」
という提案をしてくれます。
しかし、どうしてもしっくりこない部分や
利用者の反発がありそうな部分
というのは出てきます。
その時、当初の目的に沿った大局的な観点で、
会社の成長のためにはどうするのが良いか
経営者であるあなたが判断するしかない
といった場面もあるかもしれません。

2.簡単なリクエストにもベンダーが応じてくれない

これは、多少システムに詳しい人、
若いころにシステム開発に関わったことがある
といった方が感じがちな不満です。
確かに2000年頃までのシステム導入や
今でも大規模なシステム開発では
ユーザーの要件に基づいてプログラムの
開発を行っています。
その場合、ちょっとした要望に応えて
プログラムを修正するのはできなくはありません。
しかし、クラウドサービスやパッケージソフトは
基本的に利用するすべてのユーザーが
同じプログラムをつかいます。
そのため個別のユーザーに合わせて
プログラムを修正することはできません。
逆に言うと他の会社では
その仕組みで仕事がまわせている
ということです。
それで問題があるのだとしたら
今のあなたの会社の仕事の進め方に
何か普通じゃないところがあるのかも?
くらいの気持ちで改めて
仕事のやり方を見直してみてはいかがでしょう。

3.コストが増えたうえに導入前より大変になった

新しいシステムは動いている。
でも最初に思ったほど仕事が楽になっていない。
もちろん、新しいやり方に慣れるまでの間、
ある程度効率が悪くなることはありますが、
それを差し引いても前より面倒になった。
という事がしばしば起こります。
そして、クラウドサービス利用では
これが最悪の状態と言えるかもしれません。
また、デジタル化に慣れていない人が
一番やってしまいがちな失敗でもあります。
IT・デジタル化の経験が少ない人は
「IT化したら楽になる」
「システム化したら効率化される」
と考えしまうことがよくあります。
その結果、例えば
経理担当者の残業時間を削減する
紙の書類の保管や資料探しの時間を削減する
等の、もともとやりたかったこと、
実現したかった目標が、
「○○システムを導入する」
に、いつの間にかすり替わってしまい、
「どうすれば時間を削減できるか」
について考えることを止めてしまう
という事がおきます。
そして、
廃止すべき作業が残ったまま
面倒な手続きが残ったまま
さらに慣れない新システムを使わなければいけない。
という状況になるのです。
このような状況にならないためにも、
前述のやらなければいけないことの3点目
「新しい仕事の手順・ルールを決めること」
がとても大事になります。

まとめ

このように、クラウドサービスの導入は
テレビを買ってきてアンテナ線と電源につなぐだけ
というレベルで簡単にできるものではありません。
考えるべきことをしっかり考え
正しい手順で計画、導入しないと
思わぬ苦労をしたり
ベンダーとのトラブルに発展したりと
望まない結果につながってしまいます。
クラウドだからと安易に考えず
ベンダーさんと良く議論し
場合によっては、
第三者の意見も聞くなどして
単なるシステム導入ではない
真の目的を達成していただければと思います。